先日、リニューアルオープンした日本銀行貨幣博物館に行ってまいりましたので、本日はそのレポートをします。
日本銀行貨幣博物館とは
日本銀行創立100周年を記念して1982年に設置された主に日本で流通した紙幣・硬貨の博物館で、正式名称は、日本銀行金融研究所貨幣博物館。2014年12月からリニュアル工事のため休館していましたが2015年11月21日にリニューアルオープンしました。
日本銀行貨幣博物館の開館日時やアクセスなど詳細DATA
- 住所:東京都中央区日本橋石町1-3-1
- 電話:03-3277-3037
- 最寄駅:東京メトロ半蔵門線・銀座線三越前、東京メトロ日本橋駅、JR東京駅など
- 開館時間:9時30分から16時30分(入館は16時まで)
- 休館日:月曜日(ただし祝休日は開館)、年末年始(12月29日から1月4日まで)
- 入館料:無料
日本銀行貨幣博物館の年間入館者数は?
質問があったので追記しておきます。
日本銀行 貨幣博物館の年間入館者数は107,964名です・
日本銀行貨幣博物館見学レポート(1階から展示室まで)
入り口は、日本銀行分館内
入り口は日本銀行分館内にあります。ガードマンが受付をしていて、来館カードに来館人数や居住都道府県などを記入します。受付にはロッカーも設置してありました。
1階が受付、2階が展示室になります
階段上ると世界最大の通貨 ヤップ島の石貨(フェイ)登場
2階に上ると大きな石のお金が登場します。ヤップ島で実際に流通している石貨で、フェイと呼ばれ、世界最大の通貨です。大きすぎて動かすことが容易でないことから、家の前などに放置されるようですが、実際に結婚式や不動産売買の時など特別な場合に利用され、貨幣が移転せずに所有権のみ移転するという独特の流通形態です。なお、フェイは、現在は新たに作成されることはなく、ヤップ島では、日常的にドルが流通しています。
展示室入り口前は、撮影スポットや映像コーナー、売店などがあります
2階の展示室入り口前には撮影スポットがあります。
映像コーナーもあり黒田君がどや顔で話しかけてるビデオも流れていました。
また、1億円の重さ体験(約10キロ)もここでできます。虫とり小僧さんだったら指一本で持ち上げると思います。
展示室外でも貴重な資料がありました(日銀アーカイブ所属資料)
日本銀行営業免状(1882年)
1882年に松方正義大蔵卿から下付された日本銀行営業免状です。日本銀行は、ベルギー国立銀行条例を範とした日本銀行条例に基づいて設 立されました。なお、現在の日本銀行は日本銀行条例ではなく、日本銀行法(1942年制定、1949年改正)に基づく法人に改組されています。
毀損兌換銀行券交換規則(1886年)
1984年に公布された兌換銀行券条例によって、汚染や毀損などにより使うことが難しい兌換銀行券を日銀の本店や支店で無料で交換が定められましたが、その交換の諸規則(ルール)を定めたものが、この毀損兌換銀行券交換規則です。現在の汚損紙幣の引換基準のルーツとなっています。
日本銀行貨幣博物館見学レポート(展示室内)
そして展示室に入りますが、展示室内は残念ながら写真撮影厳禁ですので、文字情報でお伝えします。
古代ゾーン
本物の開元通宝、和同開珎、万年通宝、神功開宝など貴重な古銭が展示されています。
中世ゾーン
皇宋通宝(北宋時代)、元祐通宝(北宋時代)、洪武通宝(明時代)、宣徳通宝(明時代)など中国から渡来した渡来銭が多数展示されています。これら渡来銭は、12世紀頃の平安時代末期から日宋貿易などによって国内に運ばれ、さらに国内での流入していきます。
また、中世の物価なども展示してありましたのでメモしてきました。
中世の物価について
- 米1升:8~10文
- 荏油(えあぶら)1合:30文
- 鯛一尾:15文
- 扇1枚:10~15文
- 抹茶1服:1文
近世ゾーン
戦国の歴史もの小説を読んだ方ならばこのあたりが一番興味深いかもしれせん。たくさんの貨幣が展示されていますが、個人的に見たかったのは以下の3つです。
- 石州銀:大内氏、尼子氏、毛利氏が熾烈な争奪戦をした石見銀山などから算出された銀を使用した丁銀
- 天正菱大判:秀吉が後藤家に命じて作成させた最初の大判。現存しているものは6枚のみ。2015年5月にチューリヒのオークションにかけられ、110万スイスフラン(当時の為替ルートで約142百万円)で落札されました。
- 甲州金:武田信玄につきものの甲州金です。露一両金、二分一朱金、一分朱中糸目金、角一分金、吉一分金など多数の種類がありました。
他にも、慶長大判、慶長小判、慶長丁銀、寛永通宝などが展示しています。
他にも、安土桃山時代から江戸初期にかけて、金と銀の交換比率が海外と異なるため、金流出が問題となったことや、江戸時代の貨幣の改鋳により金や銀などが含む比率が時代によって変わっていくことなどが学習できます。
19世紀の物価もメモしてきました。ちなみに1両=4分=16朱です。
1両で購入できるもの(19世紀時点)
- そば:410枚
- かぼちゃ:230個
- 長いも:100本
- 鰹:16匹
- 土瓶:18個
- 下駄:22足
1朱で購入できるもの(19世紀時点)
- ろうそく:7丁
- 草履:16足
- にしん:50本
- とうふ:5丁
- 鰹節:2本
- 筆:5本
- 柿:25個
- 茶碗:4つ
- 浅草海苔:10枚
また、大判(天正長大判)や銭さし1貫文の重さ体験もできるほか、藩札、公家札、寺社札、旗本札、町村札、宿場札、高山札などが展示されていました。
知らなかったのは、播磨姫路版藩が発行した鯣札(するめさつ)。慶弔時に利用した贈物札で、他にも昆布札などもあったようです。
近代ゾーン
幕末から明治時代、そして現代の貨幣・紙幣が展示されています。
1871年に登場した円ですが、最初の紙幣はアメリカ印刷会社に委託して製造されたため、当時のアメリカナショナルバンク紙幣どデザインなどが似ているとのこと。これは知りませんでした。
このゾーンでは、西郷隆盛の決起により勃発した西南戦争の戦費調達のため紙幣増刷しましたが、その紙幣増刷により貨幣価値が下落し、インフレが生じたため、松方正義の松方デフレへと発展したことや世界恐慌や関東大震災などによる恐慌によって、金本位制度から管理通貨制度へ以降した経緯などが紙幣と資料などをつうじて学習することができます。
1930年の物価
お約束の物価をメモりました。ビールは高級品ですね。
- 豆腐20丁:1円
- じゃがいも20kg:1円4銭
- ビール2本:77銭
- 掛け蕎麦12杯:96銭
- 映画2回:1円
- 新聞1ヶ月:98銭
- 床屋3回:96銭
- 鉛筆4ダース:1円
- 牛乳2リットル:97銭
- 食パン6斤:91銭
- トランプ:1円40銭
ハイパーインフレ時の各国の紙幣もありました
他にも以下のハイパーインフレ時の各国の紙幣が展示されています。つらおさんが泣いて喜ぶに間違いありません。
- アッシニア紙幣:フランス革命期(1789年~1796年)に流通した紙幣
- 100兆マルク:第一次世界大戦後の敗戦国のドイツが多額の賠償金を背負ったことなどが要因でハイパーインフレが発生し、発行された紙幣(1923年)
- 10垓ペンゲー(ペンゴ):10垓は10の21乗、数字にすると1,000,000,000,000,000,000,000ペンゲー(ペンゴ)です。第二次世界大戦後にハイパーインフレが起こったハンガリーで発行された紙幣です。(1946年)
- 100兆ジンバブエドル:おなじみジンバブエドルもありました。(2008年)
そのほか企画展もあり
現在の企画展は、「19世紀日本の風景:錦絵にみる経済と世相-米国FRBに於ける美術品展示会の錦絵より-」です。(2016年2月14日まで)
錦絵とは、江戸時代から明治30年くらいまで描かれていた浮世絵版画のことで、米連邦準備制度理事会(FRB)が開催した美術品展覧会に出展した錦絵を公開しています。前期は、「品定開化花」などを公開し、1月5日からは「岩城升屋店前之図」などが公開されるそうです。
日本銀行貨幣博物館 見学の所要時間について
日本銀行貨幣博物館はこじんまりした博物館ですので、見学にかかる所要時間は、流してみて15分から30分程度、じっくり見ても1時間程度です。
貨幣博物館見学の感想:始めてみる貨幣が多く勉強になったけど大人向けの内容です
日本銀行貨幣博物館は、貨幣の展示のほか、どうしてその貨幣が登場・流通したのかも詳しく解説してありますので、貨幣や金融に興味がある方におススメしますが、全般的に、大人向けの内容です。
貨幣や金融などに興味を持った高校生ならばいいでしょうが、中学生やましてや小学生などの子供連れて行っても「つまんない」と言われると思いますので、ご留意を。
無料かつ、土日も開館していますし、飲み会ネタに10垓ペンゲー(ペンゴ)の実物を見ておくのも良いと思いますので、三越本店や東京駅などに立ち寄ったついでに見学してみてはいかがでしょうか?
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