個人向け社債として、損害保険ジャパン日本興亜株式会社第1回利払繰延条項・期限前償還条項付無担保社債(劣後特約付)が発売されます。
詳細を確認してみましょう。
損害保険ジャパン日本興亜株式会社第1回利払繰延条項・期限前償還条項付無担保社債(劣後特約付)の詳細
- 発行総額:100,000百万円
- 申込単位:100万円
- 仮条件利率(当初約10年):年0.60%~1.20%
- 仮条件利率(以降6ヶ月ごと):6ヶ月ユーロ円ライボー+年1.6%~2.2%
- 正式利率(当初約10年):0.84%(7月27日決定)
- 正式利率(以降6ヶ月ごと):6ヶ月ユーロ円ライボー+年1.86%(7月27日決定)
- 払込金額:各社債の金額100円につき金100円
- 償還金額:各社債の金額100円につき金100円
- 年限:約10年
- 申込期間:平成28年7月28日から平成28年8月5日
- 払込期日:平成28年8月8日
- 償還日:平成58年8月8日
- 期限前償還について1:社債発行元は、平成38年8月8日以降の利息支払日期日に、任意に額面100円につき金100円の割合で期限前償還することが可能
- 期限前償還について2:社債発行元は、資本・税制・資本性変更事由が発生し、償還要件を満たした場合に償還期日前に額面100円につき金100円の割合で期限前償還することが可能
- 利払停止条項について:社債発行元は、本社債の利息の全部を繰り延べることが可能
- 利払停止条項について:社債発行元が、ソルベンシー・マージン比率が200%を下回っているなどの場合、本社最の利息を繰り延べなければ成らない
- 償還期日の延長:本社社債は、償還期日に償還した場合に、ソルベンシー・マージン比率を維持できないなど償還要件が充足されない場合は、平成58年8月8日の償還期日を延長する可能性がある
- 利払日:毎年2月8日及び8月8日(初回は平成29年2月8日)
- 引受会社:みずほ証券、三菱UFJモルガン・スタンレー証券、大和証券、債券│SMBC日興証券
- 取得格付:AA‐(JCR)
損害保険ジャパン日本興亜株式会社第1回利払繰延条項・期限前償還条項付無担保社債(劣後特約付)の引受額(販売額)
各社の引受額(販売額)は以下のとおりです。
引受人の氏名又は名称 | 引受金額 |
---|---|
みずほ証券 | 50,000百万円 |
三菱UFJモルガン・スタンレー証券 | 25,000百万円 |
大和証券 | 15,000百万円 |
債券│SMBC日興証券 | 15,000百万円 |
合計 | 100,000百万円 |
損害保険ジャパン日本興亜株式会社第1回利払繰延条項・期限前償還条項付無担保社債(劣後特約付)の購入方法
証券会社ごとに購入方法を紹介します。
みずほ証券での購入方法
3Sサポートコースならば、コールセンターでの取引に加え、店頭での取引が可能です。ダイレクトコースは、コールセンターでの取引限定となります。
三菱UFJモルガン・スタンレー証券での購入方法
取引店へ来店するか電話での取引及びインターネットトレードでの取引が可能です。
事業債・地方債 | 新発国内債券 | 三菱UFJモルガン・スタンレー証券株式会社
大和証券での購入方法
「ダイワ・コンサルティング」コースの方は、取扱店に来店しての取引が可能です。「ダイワ・ダイレクト」コースの方は、取扱店に来店しての取引か、コンタクトセンターでの注文が可能です。
SMBC日興証券での購入方法
総合コースであれば、支店及びパソコンでの取引が可能です。
ダイレクトコースでの取扱いもパソコンでの購入は可能で。
株式会社三井住友フィナンシャルグループ第9回無担保社債(実質破綻時免除特約及び劣後特約付)(PDF)
損害保険ジャパン日本興亜株式会社とは?
損害保険ジャパン日本興亜株式会社は、2014年に損害保険ジャパンと日本興亜損害保険が合併して誕生した保険会社です。
損害保険ジャパンは、元々、安田火災海上保険と日産火災海上保険が合併後誕生した会社で、のちに大成火災海上保険を吸収合併しています。
また、日本興亜損害保険は、日本火災会場保険と、興亜火災海上保険が合併して誕生し、こちらも太陽火災海上保険を吸収合併した会社です。
つまり、少なくとも4つの保険会社ルーツに持つ保険会社であり、日本の損害保険業界の中では3メガ損保の一角です。
社債のリスクについて
信用リスク
発行元が破綻した場合は、預けたお金が戻ってこない可能性があります。最悪全額償還されないケースもありえます。
流動性リスク
償還日前までに、自身の都合によりお金が必要となり、市場等で売却する場合、流動性が低いことから、適正な価格よりも若干安い金額で売却しなければならない可能性があります。ようするに火急のお金が必要なので足元を見られるということです。
価格変動リスク
償還日まで保持していれば関係ないのですが、償還日前までになんらかの事情で売却する必要が生じた場合、市場で売却することになりますので、額面の金額よりも高い金額で売却、もしくは低い金額で売却するといった価格変動するリスクがあります。
社債における劣後特約とは?
詳しく解説すると、破産など法的に財産を整理する必要が生じた場合に、他の債権の返済が終わってから、返済を受ける債権に付けられる特約です。つまり、同順位の債権が40万円と60万円あり、破綻したときの債務者の財産が10万円しかない場合は、40万円の債権者には4万円の弁済、60万円の債権者には6万円の弁済と、同順位債権間は、等比率での弁済となります。
一方、40万円の債権と、60万円の劣後特約債権があり、破綻したときの債務者の財産が10万円しかない場合は、40万円の債権者は10万円の弁済、60万円の劣後特約債権者は弁済されないという悲惨な結果になります。
このように、他の返済が終わってから返済される=劣後ということで、劣後特約と呼ばれ、債権の弁済順位が低いかわりに高い利率を享受できるというメリットがあります。
また、保険会社が発行する劣後債はソルベンシー・マージン規制の負債性資本などと同じ扱いをすることから、あとで解説するソルベンシー・マージン規制の定義等が変わった場合や規制に該当する場合などは、投資家にとって不利益な期日前償還条項や利払停止条項の発動、さらに、償還期日の延長などの事由が生じる場合があります。
ソルベンシー・マージン規制とは?
ソルベンシー・マージン規制とは、1996年に導入された保険会社に対する資本規制です。保険会社が十分な資本金を確保していなければ、保険金を支払うことができなくなり、保険を利用している方に不利益が生じるため、監督官庁が定めた指標を元にして、業務改善命令や早期是正措置などの行政措置が講じられます。
この指標として、保険持株会社およびその子会社等に係る保険金等の支払能力の充実の度合いを測る指数(ソルベンシー・マージン比率)が採用されています。
ソルベンシー・マージン比率は、保険業法や金融庁告示の規定に基き算出されてます。
※ソルベンシー・マージン比率=マージンの総額(資本金、基金、準備金、その他内閣府令で定めるもの額の総額)÷リスク総額(発生し得る危険であって通常の予測を超えるものに対する額として内閣府令で定めた式に基いて計算額の1/2)
このソルベンシー・マージン比率の数値が200%以上あれば、保険金の支払能力が充実しているとされています。(正確には、「保険金等の支払能力の充実の状況が適当である」です)
今回紹介した損害保険ジャパン日本興亜株式会社第1回利払繰延条項・期限前償還条項付無担保社債(劣後特約付)は、このソルベンシー・マージン規制が重要で、この規制による是正措置等が発生した場合は、早期償還や、償還日延期などの投資家にとって不利益な事態が発生します。
期限前償還条項付債券とは?
期限前償還条項付債券とは、償還日以外にあらかじめ定めた日に元金の償還可能な社債です。社債の償還期限を社債発行元が選択できる代りに金利は有利な面にしており、コーラブル債とも呼ばれます。
今回は当初約10年間は年0.84%の利率、その後社債発行元が償還する権利を行使しなければ、6ヶ月ユーロ円ライボー+年1.86%の利払い金を社債を購入した投資家が享受することができます。
本社債は10年後に、発行元の判断により期日前償還される場合があります。
さらに、社債発行日から30年後の満期日までの間に、特別事由(資本事由、税制自由、資本制変更事由)が生じた場合や継続している場合は、期日前に償還される可能性があります。
利払停止条項とは?
利払い停止条項付債券とは、社債の利払い期日に社債発行元の裁量により利払いを繰り延べることができる社債です。投資家には不利な条項の一つです。
償還期日の延長もありえる社債です
特約ではないですが、損害保険ジャパン日本興亜株式会社第1回利払繰延条項・期限前償還条項付無担保社債(劣後特約付)は、償還期日近くになってソルベンシー・マージン比率が200%を下回っているなどの場合は、償還期日が延長となる可能性がありますのでご留意ください。
利率は高いがあまりオススメはしない
期限前償還条項付債券は仕組債の一種です。期日前償還時に、金利が低下していた場合は、当然償還されます。
なぜなら、金利下落局面において、社債発行元は、わざわざ高い利率の社債の利払いをするよりも、期日前償還条項を行使し、さっさと償還したうえで、改めて低金利の社債が発行すればよいからです。
一方金利上昇局面においては、社債発行元は、低利の社債で利払いした方が有利であり、期日前償還条項を行使しません。投資家は金利上昇局面においても低い利率の社債をホールドするため、投資家にとっては不利です。
社債発行元が、期日前償還条項を行使しなかった場合に、投資家がその社債を市場で売却することを考えるかもしれません。
その時の市場金利よりも金利が安い既発債券は、市場売却価格が低くなるため、元本割れは確実です。
このようにオプション付社債は、社債発行元に有利であり、投資家にとっては不利です。
さらに、本社債は、利払繰延条項もついているうえに、ご丁寧に償還期日の延長も付帯しています。
損害保険ジャパン日本興亜株式会社の財務体質は現在公表している決算上においては問題はありませんがですが、どっかの東芝のような会計処理は決算資料からは見抜けませんので、償還日までそのような決算操作をしていないことや発覚しないことを祈りましょう。
10年経過後の利率は、6ヶ月ユーロ円ライボー+年1.86%です。マイナス金利が当面続きそうな気配もあることから、早期償還される可能性が高そうですが、10年後の政策金利が、どうなっているのかを正確に予測することは不可能です。
可能性としては極めて低いと思われますが30年以上にわたって元本が拘束されるおそれもありまし、利払い延期などの措置があるかもしれません。個人がここまで長期間にわたって1つの企業に対して信用リスクを負ってまで投資する案件ではないと思います。
10年間の利率は0.84%とメガバンクの定期預金の84倍と大変高利な設定ですが、オススメはしません。
どうしても投資したい場合は、余裕資金のほんの一部にしたほうが良いでしょう。
【参考】最新の社債情報はこちらを
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