平成28年3月22日にゆうちょ銀行の預け入れ限度額が1,000万円から1,300万円に引き上げることなどを定めた政令の改正案(郵政民営化法施行令の一部を改正する政令)が閣議決定されました。
平成28年4月1日から引き上げとなりますが、ゆうちょ銀行の預入限度額やペイオフなどが混同されている方がいらっしゃいますので解説します。
【追記】 現在1300万円のゆうちょ銀行の預入限度額が2600万円に倍増される方向で動いているとの報道がありますが、まだ正式決定はしていません。
2018年12月に開催予定ので郵政民営化委員会で、「通常貯金」と「定期・定額貯金」を分離し、それぞれに1300万円ずつ預けられるよう提言する方向ですが、政府が正式決定するのは2019年となりますし、与党内でも異論があります。
ちなみに、仮に預入限度額が2600万円になったとしても預金保険制度(いわゆるペイオフ)の保護金額は変更予定はありませんので、1,000万円のままです。
正式決定した場合は、改めてお伝えします。
郵政民営化法施行令の一部改正する政令(案)の概要
郵政民営化施行令(平成17年政令第342号)の一部改正する政令です。平成28年3月22日の定例閣議により決定されましたので、この後は公布のうえ、平成28年4月1日に施行されます。改正の内容は以下の2点です。
預入限度額の引き上げ(ゆうちょ銀行)
ゆううちょ銀行は現在は、普通預金や定期性預金は1,000万円しか預入れることができません。これは、郵政民営化法施行令第2条第2項に定められた預入限度額によるものですが、その預入限度額のうち普通預金及び定期性預金(財形定額預金など除く)ものの基準を1,000万円から1,300万円へ引き上げとなります。
よって、4月1日からは普通預金や定期性預金は1,300万円まで預入が可能となります。
保険金額の引き上げ(かんぽ生命)
保険金額の算定の際に、通計制度により保険金額の計算に参入しない金額の限度を300万円か1,000万円に引き上げとなります。これによりかんぽ生命の保険契約の限度額は今の1300万円から2000万円に引き上げとなります。
ゆうちょ銀行は今でも1,000万円以上預け入れは可能
知らない方が多いのですが、ゆうちょ銀行は今でも1,000万円以上の預け入れは可能です。ただし、1,000万円以上預ける場合は、通常貯金や定期貯金など利息がつく商品である一般預金は1,000万円までしか預入できませんので、1,000万円を超過する部分は、振替貯金口座(「振替口座」ともいう)に預入れることになります。
実際に1,000万円以上(4月1日以降は1,300万円以上)預入ける場合は、振替口座の開設手続きが必要となりますので、窓口で手続きしてください。
なお、平成28年4月1日からは通常貯金や定期貯金など利息がつく商品である一般預金に1,300万円預入が可能となります。
振替貯金(振替口座)は利息のつかない預金で預入限度額なし
振替貯金(振替口座)は一般の金融機関の当座預金など利息のつかない決済用口座に該当します。振替貯金口座内の預金には、利息はつきませんが、預入限度額は現在も、4月1日からも上限はありません。
財形貯蓄預金は1,000万円(4月1日から1,300万円)の別枠で550万円まで預入可能
財形一般預金、財形年金預金、財形住宅預金など財形定額預金の預入限度額は、1,000万円(4月1日から1,300万円)の別枠で、3種類の財形預金合計550万円まで預けれ可能です。
ただし、郵政民営化前に契約した財形年金貯金の預入限度額のみ385万です。(550万円の内数となりますので、単体で385万円しか預けれできないという意味です。)
預入上限が1,300万円に増えても預金保険制度(いわゆるペイオフ)の保護金額は1,000万円までです
ゆうちょ銀行は預金保険制度の対象の金融機関です。よって利息がつく預金(定期貯金、通常貯蓄貯金、定期貯金、定額貯金、財形貯金)は1人あたり元本1,000万円までとその利息が保護されます。
4月1日以降は、ゆうちょ銀行の預入上限額が1,300万円になりますが、ゆうちょ銀行の通常貯金や定期貯金など利息がつく商品である一般預金に1,000万円超え1,300万以内預けた場合は、1,000万円を超える部分が預金保険制度の対象外となり、ゆうちょ銀行が破綻した場合は保護されません。
財形貯蓄預金も預金保護制度による利息がつく預金の範囲になりますので、定期預金や定期貯金などの合算して1,000万円までしか保護されません。預金限度額とは概念が全くことなりますのでご注意ください。
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ゆうちょ銀行預入限度額と預金保険制度による保護金額のまとめ
まとめると以下のようになります。まずはゆうちょ銀行の預入限度額と預金保護制度は全く異なることを理解しましょう。
商品 | 預入限度額 (2016年3月まで) |
預入限度額 (2016年4月から) |
預金保護制度 (ペイオフ) |
---|---|---|---|
定期貯金、通常貯蓄貯金、定期貯金、定額貯金など | 1,000万円まで | 1,300万円まで | 合計1,000万円まで |
財形貯蓄預金 | 550万円まで | 550万円まで | |
振替貯金 (振替口座) |
預入上限なし | 預入上限なし | 全額保護 |
預入限度額が増えるのに預金保護制度の保護金額が増えないのはなぜか?
預金保険の保護金額1,000万円という数字は、昭和61年の引き上げ時に、郵便貯金の預入上限額である1,000万円を基準に定めた経緯があります。よって、預入限度額が1,300万円になるのだから、1,300万円全額預金保護すべきだというお考えを持つ方も多いでしょう。
ただし、現時点では、預金保険の保護金額の上限を上げる問題は、ゆうちょ銀行単体の問題ではなく、預金保険対象の金融機関(メガバンク、信託銀行、地方銀行、信用金庫、信用組合、農業共同組合など)全体に波及することになります。郵政民営化の時点では、金融機関は預金保険の上限の引き下げを要求したくらいですから、議論は紛糾することは目に見えています。
今回は、ゆうちょ銀行の預入限度額のみ議論した結果、ゆうちょ銀行の預入限度額を300万円増やすことを決定しましたが、預金保険制度の根幹である預金保険法の改正は全く議論されていません。つまり、預金保護制度の変更は現時点ではありませんので、混同しないようにしましょう。
ゆうちょ銀行はマイナス金利と預入限度額増加で経営は、泣きっ面に蜂状態に
蛇足ですが、ゆうちょ銀行は、マイナス金利政策導入により運用益が見込めないため、経営面では大変厳しい状態になっています。
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ゆうちょ銀行(郵便局)に高金利の定期預金キャンペーンを求めてはいけない理由
皆さんゆうちょ銀行の高金利の定期貯金キャンペーンをのぞんでいらっしゃるようです。しかし、ゆうちょ銀行に高金利の定期預金キャンペーンを求めてはいけません。なぜなら ...
その最中に、預入限度額増加により、利息負担が増えます。せっかく定期貯金や定額貯金などの金利を下げても、また減益要因となることは明らかです。
預入限度額の議論は昨年から始まっていたことですので、マイナス金利政策が導入されたのが誤算といえば誤算ですが、時期的には最悪ですね。まさに泣きっ面に蜂状態で、今後も経営的に厳しい状況が続くと思います。
【追記】ゆうちょ限度額の撤廃が決まりそうです
2017年10月の衆院銀選挙の自民党公約にゆうちょ銀行の預け入れ限度額、かんぽ生命保険の加入限度額の「さらなる見直し」が盛り込まれました。
これを受けて野田総務相は検討する意向を示しています。選挙結果によっては、この限度額の再引き上げが加速する可能性があります。
野田聖子総務相は3日の閣議後記者会見で、自民党の衆院選公約に盛り込まれたゆうちょ銀行とかんぽ生命保険の限度額見直しについて、「利用者にとって必要な限度額のさらなる見直しを進めたい」と述べ、検討する考えを明らかにした。
また、政府の郵政民営化委員会がゆうちょ銀行の通常貯金の預入限度額(現状1,300万円)を撤廃を容認するとの報道が2018年3月に入ってからでてきました。政府内で異論もあるためまだ決まっていませんが、撤廃される場合は年内に政令を改正するようです。
政府の郵政民営化委員会(岩田一政委員長)が、ゆうちょ銀行の通常貯金について、預け入れ限度額の対象から除外することを容認する見通しとなった。
民業圧迫の懸念が小さくなったと判断したとみられる。地方での利便性向上も重視した。
月内にも示される見解を踏まえ、政府は年内に政令を改正する。ただ、政府内には民業圧迫を指摘する声もあり、限度額を一定額引き上げて決着する可能性もある。
ただし、金融業界からは反発がでていますので、このまますんなり決まるかどうかは分かりません。
しかし銀行業界はすでに民業圧迫につながるとの批判を強めている。全銀協の平野信行会長(三菱UFJフィナンシャル・グループ社長)は15日の記者会見で、「ゆうちょ銀はわが国の市場で預金シェアが20%ある」として、ゆうちょ銀が先進国で最大の預金金融機関であると指摘。さらに「その動向・戦略次第で金融システムに大きな影響を与える」と述べ、限度額撤廃が及ぼす金融業界への余波に危機感を示した。
何度もいいますが、限度額が撤廃されても貯金保険1千万円枠は同じですので、誤解しないようにしてください。
【参考】定期貯金と定額貯金の違いは?
定期貯金と定額貯金の違いは以下のページで解説しています。
参考ゆうちょ銀行(郵便局)の定額貯金と定期貯金どっちに預けた方がいいのか質問がありましたので違いや比較などしたうえで回答します
【参考】他の金融機関から定期預金の資金を振り込む時の手数料を無料にできる銀行はこちら
定期預金の資金を他の金融機関から移動させるときに、振込手数料を支払っていませんか?
他行宛振込手数料が無料になる金融機関は、たくさんありますので、利用しないともったいないですよ。
詳細は以下のページをご覧ください。
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【参考】預けた定期預金の満期資金を無料で他の金融機関に移動させる方法
預けた定期預金満期金を無料で他の金融機関に振り込む方法は以下のページで解説しましたのでぜひご覧ください。
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